2015年8月23日日曜日

第3回代表者会議(学童キャンプ 大報告会)

8/21(金) 3回目となる代表者会議が行われました。

代表者会議では
会長の挨拶から始まり、9学童からの活動報告、
各部(広報部、運動会部、研究部)の報告、
さらに各担当(会計、三多摩、日本の学童ほいく、保問協、子ども子育て会議、50 年誌、協議会)、
最後に事務局からの連絡事項と盛りだくさんのアジェンダがあるのですが、
今回は学童キャンプ終了して最初の代表者会議とあって、キャンプの話題が非常に盛り上がり時間の半分以上を使ってしまいました。

次回さくらもちは、キャンプ特集号です。こちらのブログでも掲載しますので
掲載をお楽しみに!

2015年8月18日火曜日

1ダース分のひとり言 第十二話(最終回) 「学童ってなんだ?」

■学童ってなんだ?

500人が乗った船が、大海の真ん中で今まさに沈もうとしている。この船に備え付けられた救命ボートは10人乗りが5隻。救命ボートに乗りさえすれば、確実に命が助かる。乗ることができるのは50人。さて、自分も含め、誰を乗せればいいのだろう。

まるでセミナーかなにかで問われそうなこの設問、このまま考えを進めるにはあまりにも情報が不足している。そもそもどのような500人が乗り合わせていたのか内訳がわからない。年齢構成は?男女比率は?国籍は?政治は?宗教は?スキルは?病人は?と検討しなければならないことは山盛りある。そして、やっかいなことに導かれた答がけっして正しいとは限らない。なおかつ、緊迫した現場で、瞬時にこれらのことを整理して、誰もが納得する適切な答を見つけることはもはや不可能である。かといって、黙っているとたちまち500人の集団はパニックに陥り、われ先にと救命ボートを目指すだろう。

結果、力まかせの屈強な大人か、とんでもなく悪知恵が働く大人だけがボートを独占し、助かることになる・・・かもしれない。

さて、それでいいのだろうか?
危機に陥った人間のやることは過去に創り上げた文化や文明の蓄積を帳消しにして、同じ過ちを繰り返す。残念ながら歴史がそれを証明している。

この重大なジレンマを前にしてぼくたちにできることは何だろう?
きっと、ひとりひとりが日常の中で一度ぐらいはこのことについて考え、責任ある答を準備しておくことではないか、とぼくは思う。

実はこの問いかけはぼくたち大人がどのような社会を望んでいるのか、という問いかけに他ならない。そして同時に、次の社会を創る子どもたちに何を伝えていこうか、という問いかけでもある。もし、その答がはっきり見えるならば、学童にぼくたちが何を求めるのかということの答は、すでにそこに示されている。

学童を取り巻く社会状況はきっとこれからどんどん変わっていくに違いない。
現在、市が推し進めている民営化はもとより、大規模化もすでに着々と進行しているし、利用者の意識もずいぶんと変化していくだろう。世の中の価値観だって時代と共に変わっていく。今後予想されるそのような環境の変化のなかで、学童を考えるうえで最も大切なものは何かということについて、ぼくたち大人は責任ある答を準備しておきたい。

さて、最終回の問いかけ。
そもそも500人乗りの船に50人分の救命ボートしか備え付けられていない不備を改善すべく行動を起こす気力が持てるだろうか?
そして500人の内訳をどのように考えただろうか?
そのうち救命ボートに乗せた50人はいったいどういう人たちだったのだろうか?

最後に・・・救命ボートに自分は乗ったのか?

きっと答えるには、相当な勇気がいる・・・


最後まで読んでいただいた方々に心より感謝いたします。
8月21日(金)の代表者会議でお会いしましょう!

前野武彦

2015年8月16日日曜日

1ダース分のひとり言 第十一話「大規模化ってなんだ?」

■大規模化ってなんだ?

小金井市の学童児童数は年々増加の一途を辿っている。平成27年4月時点での児童数は9学童の合計で847人となった。過去を振り返ると、児童数は平成19年で666名、そこからしばらく横ばいあるいは微増の状況が続いていたが、二年前は726人、一年前は791人と、ここ二年間で121名増と急激に増えた。

運営基準には9学童合計の定員数は790名と定められている。昨年度791名と、とうとう定員をオーバーしてしまった。もっとも運営基準に示されている通り、市長が必要と認めたときは基準定員のおおむね10%の範囲内で、基準定員を超えて入所を認めている。とすれば、870人ぐらいが定員と読めるし、入所要件を満たす児童は全て受け入れるという全入の方針もあることから、とりあえずは待機児童が出ることはない、と信じたい。

ただし学童別にみると、今年度、定員に達していない学童がある一方で、5箇所の学童においては定員の10%の範囲を軽く超えてしまっている。一番深刻な学童では定員の33%増となった。要するに一部の学童ではギュウギュウ詰めの状態で保育が行われている。

小学校の児童数や出生率などはほぼ横ばいの状態であるから、単純に学童を必要とする世帯が増えていると読める。この二年間の急激な増加は、国の旗振りによる一家族二馬力制が一気に加速しているのではないか。だとすると、しばらくこの増加傾向に歯止めはかからないのではないか。もし来年度も50人~60人増えたとすると、ぼくたちの学童はいったどうなるのだ。もしかすると、あと二年で1,000人の大台に乗る可能性だって否定できない。

この大規模化に対する行政側の対応策はいたってシンプルで、施設を増やすか入所要件のハードルを上げて入口を絞るか、もしくはその併用である。だがしかし、答はシンプルであっても、その方策はとてつもなく難しいことは、自明の理である。資金、人、施設・・・すべてが難問である。そして、どれもこれもうまくいかないことが明らかになってしまった暁には、全入の取止めや児童館、放課後子ども教室との一体運用も俎上に乗るだろう。というかこの機に乗じて国の方針とかなんとか言いながら一気に舵を切るつもりでは、などと勘繰ってしまう。

小学校、中学校の空き教室を利用する、利用率の低い市の施設を使用する、市内福祉関連施設に学童を併設する、空き地にプレファブを建てる、民間事業者を誘致する、篤志家を大募集する、NPOを検討してみる、育成料を値上げる、国、都の関連事業の補助を引っ張り込む・・・さてさて、だれもが膝を打って納得するような解決策はないものだろうか?

今年度、学保連では研究部を中心にこの大規模化について検討し、不確定な要素をできる限り排除したうえで資料を整理し、運営協議会を通じて行政と協議していきたいと考えている。

さて、ぼくたちは大規模化が今後いよいよ進行するとした前提で、どのような学童のあり方を未来に示せばいいのだろうか?


参考
学童保育所運営基準(改定版)本文
http://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kodomokateibu/jidouseisyounenka/siryou/D5503020_20120113.files/26.10.7honbun.pdf


前野武彦

2015年8月14日金曜日

1ダース分のひとり言 第十話「事業評価ってなんだ?」

■事業評価ってなんだ?

昨年、今年度からの民営化を見据えて新しく参入する事業者の運営に対する評価が必要であることを市側と確認した。しかし、その形式や実施方法などの具体的内容が定まらぬまま民営化に突入してしまった。

今年度、第二回の運営協議会において「事業者に対する評価」が改めて議題となり、協議を進めてきた。市側の意見は二転三転したが、結局は民営化された4学童の「利用者の満足度調査」程度をやればよく「おおむね満足」の結論を導くことができれば、参入した事業者はうまくやっていると評価できるという意見だった。

あれっ?ほんとうにそうだろうか?
過去から現在まで連綿と積上げてきた「保育の質の維持向上」に対するチェックがそれでできるのだろうか?運営主体が民間事業者であれ、市であれ、これまでと同じかもしくはよりよい保育が実践されていないといけないはずだ。そのための【運営基準】であり【運営協議会】であったはずだ。「事業者評価」ではなく「事業評価」であるべきだ。事業者が事務仕事さえ滞りなくこなしていれば利用者はそれで満足しないといけないのだろうか?

危機感を感じた協議会委員が中心となって評価のあり方から内容に至るまで詰め、みなみ中村さん発案【運営基準】に示された項目に沿って利用者に問うという、小金井独自の「利用者アンケート(案)」を市側に提案するに至った。さらに、民営化された4学童のみならず9学童全体で同じ調査を実施し、学童間で差のない保育が実践されていることを確認することも市側に申し入れた。また、今年度限りの調査では事業の継続性が見えないことから「実施要領」を定め毎年実施することも市側に申し入れた。

この「平成27年度小金井市学童保育所利用者アンケート」と「小金井市学童保育所利用者アンケート実施要領」の策定は、市側と細かい調整を加えながらまさに現在進行中である。8月の代表者会議で承認のうえ8月の第5回運営協議会で決定され、9月に実施の運びとなる予定である。

また、このアンケート結果の活用方法は大きく以下の四点ある。
【運営改善への活用】事業者(直営、民営共)の弱点を抽出し運営の改善に活用する。
【全体事業への活用】9学童全体の運営状況のバランスを読み取り、学童間で差のない保育を実践するために活用する。
【情報公開への活用】学童の運営内容について広く利用者に知ってもらうために活用する。
【次期委託への活用】委託初年度にどのような問題が起こったかを検証し、次に予定されている民間委託への準備のために活用する。

さて、ぼくたちはこの方法をもって小金井学童の質の高い保育を次世代につないでいくことができるだろうか?


前野武彦

2015年8月12日水曜日

1ダース分のひとり言 第九話「学保連ってなんだ?」

■学保連ってなんだ?

ぼくが初めて学童に足を踏み入れたのはほんの2年前だ。市内9学童が集まる学保連というのがあって、そこに顔を出すとたちまち別府さんにアルコール漬けにされるという巷の噂は本当だった。というか別府さんと同じ学童のぼくは、すでにたけとんぼできれいに丸ごと浸けられていたのだが・・・

学保連のことを知るにつけ、職業も年齢もバラバラで市内全域をカバーするコミュニティであるこの集団がとても楽しい集団であると思い始めた。そして、ここに集まる人たちが子どもたちを通して未来を語っていることにすぐ気付いた。「運営基準」「運営協議会」とこれまでみてきたように、ずっーと昔から学保連の父母たちは、現状を踏まえながら未来のことを語っているのだ。

さて、小金井市学童保育連絡協議会(学保連)は市内9学童保育所の父母会の連絡組織です。ってことだけで学保連の説明は終わらない。なかなか奥深いのだ。

学保連の集まりは代表者会議と称して、原則毎月第二金曜日の19:30~21:45に開催されている。2時間程度の枠の中で各学童父母会長の活動報告、広報部、運動会部、研究部からの報告、会計、三多摩連協、保問協、子ども子育て会議、50年誌、運営協議会からの報告、事務局からの連絡とてんこ盛りの会議となる。ほとんど報告だけに終始してしまうため、その後の本会議「やるき」で熱い議論が飛び交うことになる。

その他、スピンオフ会議として代表者会議のおおよそ一週間前に事務局・協議会合同会議開催、その後の本会議は「華縁」、運営協議会は月末開催、その後の本会議は「まさや」と、たいへん忙しい。ちなみに運営協議会以外の各種会議、及び本会議は誰でも参加できる。出口のことは知らないが、入口は開きっぱなしだ。

今年度の学保連の代表者は62名いる。代表者会議には40名近く集結する。そして、今年度は母が多く、女性父母会長が9学童中5名いる。ちなみに昨年度は1名だった。女性が輝きまくる今年度の学保連で父たちはジリジリと押されつつある。なのに、母たちが本会議に来ない!と藤井事務局長は嘆く。岩のような顔をした前野が難しい顔してにらみ倒すからだ!とか言って、もはやいいがかりである。「ホトケのマエノ」と言われたワタクシが羊並みのやさしさをもってお話しを伺わせていただくので、輝きまくる女性のみなさま、ぜひ本会議へ!

あえて付け加えておくが、アルコールは決して必須ではない。ノンアルの志水さんなんかウーロン茶三杯目ぐらいでどういうわけか完全に目が座り、最後はだれよりも熱く語っているのだ。とにかく、ここに参加するひとりひとりの「コトバ」が学保連を動かしている。

さて、ぼくたちは「学保連」という財産をどのように維持・発展させていくことができるのだろうか?


参考
別府さん:2012年度たけとんぼ学童父母会長、2013年度学保連会長
志水さん:2014年度さわらび学童父母会長、2015年度学保連事務局次長


前野武彦

2015年8月10日月曜日

1ダース分のひとり言 第八話「学童保育所運営協議会ってなんだ?」

■学童保育所運営協議会ってなんだ?

先輩父母たちは前述の「運営基準案」を作成する一方で、行政と父母との接点を作る重要性にも目を向けていた。行政の人事は猫の目のようにクルクル変わるし、そもそも父母会自体、現役主義であるがゆえ、3年経てば陣容が一変する。なんとか人が繋がるシステムを構築しておきたいと考え、まず手始めに行政の人事異動の季節に合わせ「懇談会」を目論んでいる。行く末は「協議組織」へと発展させるための、であるからかなりの策士ぞろいだったのだろう。

そして協議会組織設置の「要望書」を提出し、時を待たずして「市と学保連の対話の場」という準備会の開催に至り、その後「学童保育所懇談会」に結実する。当初は不定期の懇談会であったらしい。これが今日の【学童保育所運営協議会】の原型である。

そしてついに、平成21年には市長の了承を得て設置要綱が定められ【学童保育所運営協議会】という現在の公式の協議組織へと生まれ変わった。ただ、定例開催となったのはここ数年のことであるらしい。たった6年前の出来事なのだ。

この組織の目的は「学童保育所事業運営のサービス向上に資するため」であり、
学童保育所運営上の諸問題の解決を図ること
学童保育所のあり方について調査、立案すること.
を協議することであり、その議事録は公文書として市に保管され、正しい請求があれば一般閲覧可能なものである。

この組織は現在、下記15名(学保連会長除く・・・涙)で構成され、委員長は児童青少年課長、副委員長は父母側委員代表が務める。
市側:子ども家庭部長、児童青少年課長、児童青少年課係長、主任指導員3名
父母側:9学童の各協議会委員
傍聴席:学保連会長1名(ただし発言は認めない・・・涙)

民営化初年度となる今年度は、子ども家庭部長、児童青少年課長とも新任となった。父母側は9名のうち7名の委員が入れ替わった。ちなみに前任の子ども家庭部長は定年退職である。結果としてこれまでの経緯を詳しく知る人がほとんどいなくなった。

子どもたちを真ん中に置いて、行政、父母、指導員が協力してよりよい学童を目指すことを協議することが【学童保育所運営協議会】の本来的な目的である。大人同士それぞれ立場は違えども距離を近づけ稔りある場となることを切に願う。

さて、ぼくたちは先輩父母たちの努力の結晶である【学童保育所運営協議会】をどのように活用すればいいのだろうか?そしてどのように次世代につないでいけばいいのだろう?


参考
書籍:民間委託で学童保育はどうなるの
著者:東京小金井の親たち
出版:公人社

小金井市学童保育所運営協議会設置要領
http://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kodomokateibu/jidouseisyounenka/siryou/D550302020131209.files/shiryousan.pdf


前野武彦

2015年8月8日土曜日

1ダース分のひとり言 第七話「学童保育所運営基準ってなんだ?」

■学童保育所運営基準ってなんだ?

さて、当時の父母たちが発見した小金井学童の「質の高い保育」。学童を取り巻く社会状況がたとえどう変化しようとも、この質を維持・発展させるためにはどのような手を打っておけばよいか、を考え始めた。本当に頭の下がる思いである。

まず、当時の学童保育の現場をていねいに紙面に写し取り、さらに少しの理想を加えれば、それが小金井学童の基準となり、事業者が変わろうと、大規模化が進もうと、利用者の意識が変化しようと「保育の質」を維持できるのではないか、という方針の下、ものすごいエネルギーを投じて「運営基準案」を作成するに至っている。

なんと行政ではなく、学保連を中心とした父母が作成しているのだ。そして、平成17年に「小金井市学童保育所の今後のあり方に関する要望書」というかたちでまとめ上げ、市長と児童福祉審議会に提出している。

そして、三年後の平成20年に、市は現在の運営基準の原型となる【学童保育所運営基準】を完成、公表した。しかしその内容は父母たちが作成した「運営基準案」とはだいぶ違う内容であったらしい。感覚的かつ抽象的な表現は一掃され、量で計れる部分だけが残った。ただし、その後、当時の父母たちの粘り強い働きかけによって、冒頭に「小金井市学童保育所保育理念」を加えるという改定が成されている。まったくどうして小金井学童の父母たちはこんなに熱いのだろう。

その熱さは現在も冷めることはない。昨年、4学童が民営化されるにあたり、【学童保育所運営基準】の改定が行われた。改定の方針は、民間事業者向けに文言の修正を加える程度の技術的改定であった。しかし実は、民営化は「総合的な見直し」の一環であって、障がい児枠の撤廃、職員の加配の中止、という極めて重要な見直しも「総合的な見直し」の中に含まれていた。民営化にかかわる改定の陰で、そのことはひっそりと数字だけが改定されようとしていた。

学童が民営化、大規模化していく社会的状況の中、そもそも福祉事業であるはずの学童保育が、新たな利用者層の中庸をもって標準化されてしまうのではないだろうか、という懸念があった。つまり、社会的弱者に対する視点がなおざりになってしまうかもしれない、という懸念である。そのことに危機感を覚えた学保連研究部が「全ての児童の人格と個性を尊重し、共生の場を目指します。」という一文を冒頭の「小金井市学童保育所保育理念」に加えるべく、粘り強く市に働きかけ、ついに実現した。ぼくは何度も何度もこの一文を復唱し、こみ上げるなにかで枕を濡らした。

さて、ぼくたちは先輩父母たちの努力の結晶である【学童保育所運営基準】をどのように活用すればいいのだろうか?そしてどのように次世代につないでいけばいいのだろう?


参考
書籍:民間委託で学童保育はどうなるの
著者:東京小金井の親たち
出版:公人社

ハンドブック:私たちが望む学童保育のあり方
編集:小金井市学童保育連絡協議会

学童保育所運営基準(改定版)本文
http://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kodomokateibu/jidouseisyounenka/siryou/D5503020_20120113.files/26.10.7honbun.pdf

学童保育所運営基準(改定版)資料
http://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kodomokateibu/jidouseisyounenka/siryou/D5503020_20120113.files/26.10.7shiryou.pdf


前野武彦

2015年8月7日金曜日

1ダース分のひとり言 第六話「保育の質ってなんだ?」

■保育の質ってなんだ?

小金井学童の児童は、どうして「ほとんどやめない」のか?
当時の意識調査によると、利用者の満足度がかなり高い。それはきっと「保育の質」が高いことの証左ではないか。学童という場所が子どもたちにとって居心地のいい場所になっているに違いない。きっと小金井の学童指導員は、そういう場所を創ることに長けているのだ。と検証を進めた。

ではいったい「保育の質」ってなんだろう?と当時の父母たちは次のステップに踏込んだ。
改めて学童をよく観察してみると、日々の生活の中での「あそび」や「取り組み」といった「保育内容」が優れていることを発見する。さらに、その「保育内容」を実践している「指導員の質の高さ=子ども好き×知識×経験×安定収入」に気がついた。そして、日々「あそび」や「取り組み」の「準備」をして「実行」して「検証」して「改善」する。そしてちいさなことでも「伝達」する、というような運営サイクルも完成されていた。

小金井の指導員は、そもそも市の職員として採用されているため、就労環境が安定し、定着率が高い。ゆえに知識や経験が蓄積され、それが次の若い世代へとうまく引き継がれていく土壌があった。

結論的に言えば、ベテランと若手のバランスの取れた指導員たちが、よく練られ、充実した保育内容を実践してこそ、子どもたちにとって居心地の良い場所を創ることができ、みんなが離れたくない学童になる。

当時の父母たちは、直営か民営か論争もさることながら、すでに目の前で実践されている「保育の実情」=「質の高い保育」を維持・発展させてゆくことが、ほんとうは最も大切なことで、このことをこそ、未来につないでいかないといけない、と考えてくれた。

このような保育は今でも継続している。ぼくたちは、この学童の日常に気づき、理解しているだろうか?そして感謝しているだろうか?とかいっても、小金井の学童しか知らないぼくたちにとっては、あたりまえのこととしかとらえようがないのだけれど。いつだって大切なものは、失った時にその大きさに気づくのだ。

きっと、小金井のベテラン指導員は「保育職人」に違いない。0.01mmの厚みの違いを指の腹で触って言い当てるぐらいの「匠」のレベルに達しているはずだ。

さて、ぼくたちはこの「匠の技」を次世代につないでいく方法を知っているだろうか?
あるいはこれからその方法を編み出すことは可能だろうか?


参考
書籍:民間委託で学童保育はどうなるの
著者:東京小金井の親たち
出版:公人社


前野武彦

1ダース分のひとり言 第五話「やめない率ってなんだ?」

■やめない率ってなんだ?

第2次行革時に「民間委託」という言葉が初めて市側から活字として示されたことによって、当時の父母たちが色めきたち、このことを真剣に考え始める。

そもそも民営化は良いことなのか、悪いことなのか?なんとなく民営化はよくないのかなぁ、という感覚だけでは議論の余地がない。このことを契機に小金井の父母たちは、他の自治体の実態調査から始まり、学童利用者の意識調査、勉強会の開催等、学保連内部に研究部を立上げ、地道で精力的な活動を展開している。ちなみに、現在の学保連研究部のルーツはここにある。

この調査を通じて、小金井の学童に入所した児童は「ほとんどやめない」ことを発見する。どうやら他の自治体の学童では、学年が上がるたびにほぼ半減する勢いで児童が去っていくことも珍しくないらしい。たとえば1年生で20人入所したとすると、2年生になる時に10人になり、3年生になる時には5人になる、といった具合だ。

地道な調査を進めていくうちに「ほとんどやめない」小金井の学童は全国でも稀であることがわかった。親の就労環境の変化や引越しなどの特別な事情がない限り、子どもは学童を「ほとんどやめない」。要するに、学童が楽しくないから、イヤだからというだけの理由で学童を去る児童は極めて少ない。

ぼくは小金井の学童しか知らないから「ほとんどやめない」学童があたりまえだと思っていたが、当時に限らず、現在でも児童が「ほとんどやめない」学童は全国的にも稀なことだそうだ。この「ほとんどやめない」ことを地道な調査で数字に置き換え、表にして明らかにしたのが「やめない率」である。

たとえば、1年生で20人の児童が学童に入所したとする。3年生で卒所するときに、18人の児童が同じ顔ぶれだったとすると、「やめない率」は90%となる。

「やめない率」の調査は近年途切れてしまっていたが、民営化へ移行しつつある現在、継続的に調査を実施することで、果たして学童がこれまでと変わらず運営されているかどうか、直営と民営で保育に差が出ていないか、を浮き彫りにするための指標としたいとの考えから、今年度の学保連研究部が中心となって復活させようとしているところである。

さて、ぼくたちは「やめない率」が極めて高い小金井の学童を継続して望むのだろうか?
それとも、子どもが行くのを嫌がるかもしれないけれど、学習機能付みたいな付加サービス山盛り系の学童を望むのだろうか?


参考
書籍:民間委託で学童保育はどうなるの
著者:東京小金井の親たち
出版:公人社


前野武彦

2015年8月6日木曜日

1ダース分のひとり言 第四話 「公設公営ってなんだ?」

■公設公営ってなんだ?

小金井市の学童事業を概観すると、学童は市が施設を所有し、市の職員が働く、という「公設公営」でこれまで運営されてきた。実は50年前の学童開設当初は、社会福祉協議会に運営を委託していて「公設民営」であったらしい。職員の安定雇用、就労環境等の改善などの理由でにわかに運動が巻き起こり、市が直接運営する「公設公営」方式に変わったという経緯があるらしい。

小金井市の学童事業は歴史も古く、ついに昨年50年の節目を迎えた。近年の利用者アンケートによると、利用者の満足度はかなり高く、他の自治体に比べてずいぶん恵まれた環境であるといえる。他方、「公設公営」で学童を運営している行政にとっては、市の正規職員を指導員に充てているわけで、人件費にずいぶんお金がかかる。

学童運営に必要な費用は、大きく分けると人件費、施設整備費、備品購入費等々となるが、大半は人件費である。ここをなんとかしたい、というのが第1次行革から一貫して市が掲げてきた目標である。過去の憶測に近い試算によると、民営化によって学童運営事業費は半減される、ということだったらしい。実はそんなにうまくいかないことが、民営化初年度である現在、すでに明らかになっているのだけれど・・・

ともかく、第1次行革で、正規職員の数を減らし、多少なりとも市の財政改善に貢献した。そして、第2次行革でいよいよ初年度2学童の民営化、以後毎年1学童ずつ民営化、に踏み切ろうとしたが、市側が準備不足のままいきなり断行しようとしたため、利用者の猛反発を食らい頓挫した。

そして、現在進行中の第3次行革で仕切りなおし、ようやく今年度から4学童の民営化に踏み切った。さらに2年後には2学童を民営化する予定である、というのが現状である。最終的には、市内全9学童をすべて民営化したいはずだ。

と、こうやって見てみると「公設民営」イコール運営事業費の抑制という視点のみで市は民営化を推し進めようとしているようにみえる。それってはるか以前に社会福祉協議会に運営を委託していて、職員の安定雇用、就労環境の改善などの理由で「公設公営」方式に変わったことのまったく逆のことをやろうとしているのではないか?職員の安定雇用や就労環境の整備は各民間事業者にまかせ、トータルの運営事業費だけを抑制する、というやり方で大丈夫なのかっ、小金井市!

平成26年度、国全体で「公設公営」が38.7%、「公設民営」が44.2%、「民設民営」17.1%で「公設公営」がもはや小数派で、しかもジリジリと減りつつある現状からすれば、すでに流れはできているものと思われるが、問題はその内容とやり方だ。(※国では公立公営、公立民営、民立民営、そして学童は放課後児童クラブの表記:参考資料p5下段表)

さて、ぼくたちは「公設公営」に賛成なのか反対なのか?そして、その賛成の理由、反対の理由をキチンと第三者に説明できるだろうか?


参考
厚生労働省 平成26 年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11906000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Ikuseikankyouka/0000064488.pdf


前野武彦

2015年8月3日月曜日

1ダース分のひとり言 第三話「市民会議ってなんだ?」

■市民会議ってなんだ?
前回までの小金井市の行革と学童の経緯をまとめると、次のようなことになる。
第1次行財政改革大綱(平成9年)
学童:正規職員の減員
第2次行財政改革大綱(平成12年)
学童:児童福祉審議会への諮問
第2次行財政改革大綱(改定案)(平成18年)
第3次行財政改革大綱(平成22年)
学童:4学童の民営化
第4次行財政改革大綱(予定)(平成28年)
学童:2学童の民営化(予定)

18年間にわたるこの一連の行革において、市長は市民から有識者を募り「行財政改革市民会議」を設置して、7期に及んで行革の進捗具合を諮問している。「行財政改革市民会議」の設置要綱には「小金井市における行財政改革を推進するに当たり,幅広い見地からの建議,助言を得るため」と書かれてある。

行財政改革は「質やサービスの維持向上」を前提としている。しかしながら、市民会議から繰り出される建議、助言は、結局のところ「経常収支比率」という数字だけをひたすら追いかけて、近隣他市や全国平均と比べてはため息を漏らすということを繰り返している。そして学童事業については、ため息だけでは治まらなかったようで、直近の第7期の中間答申においては、かなり辛辣な文言がずらりと並んでいる。この部分を読んで、頭から湯気が立ちのぼる学童関係者がきっと後を絶たないものと思われる。

平成26年2月(中間答申抜粋)
(5)その他の課題
学童保育に関しては「小金井市学童保育所運営協議会設置要綱」が制定されている。行政としての権限と責任を果たす点からは疑問がある。そもそも、任意的な定義づけされていない団体を要綱に盛り込むこと自体、行政運営のありかたの根幹から再考すべき事柄である。いずれにしても学童保育業務については早急に指定管理者制度に転換すべき業務である。←抜粋ここまで

「任意的な定義づけされていない団体」とはもちろん学保連のことであり、このような団体が行政に介入すべきではない、と読める。ところが、不思議なことに平成27年3月の最終答申では、これらの文章がきれいに削除されている。なぜだ?もしや、ぬかりがあったことに気付いたか。

さて、ぼくたちは「経常収支比率」をにらみながら、市が約束している「質やサービスの維持向上」についてどのような意見を持てばいいのだろう?


参考
小金井市行財政改革市民会議 中間答申 平成26年2月
http://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kikakuzaiseibu/gyoseikeiei/info/chuukantoushin.files/chuukantoushin.pdf

小金井市行財政改革市民会議 最終答申 平成27年3月
http://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kikakuzaiseibu/gyoseikeiei/info/tousin.files/tousinhonpen.pdf


前野武彦

1ダース分のひとり言 第二話「行財政改革ってなんだ?(その二)」

■行財政改革ってなんだ?(その二)

前回は小金井市の行財政改革と学童の関係についての経緯を並べてみたが、行財政改革は当然のことながら、学童事業だけに向けられたものではなく、例えば第3次行革で見ると電気料金、電話料金、郵送費用などの見直しから保育園、児童館、公民館、給食などの見直しに至るまで多岐に渡り、市全体で77項目について検討要としており、学童事業の見直しはその内のひとつである。

ただ、これまでの行革で、実際に効果を上げた項目が、69.保育業務の見直し、70.保育料の改定、71.学童保育業務の見直し、72.児童館業務の見直し、73.小学校給食業務の見直し、と、ほとんどが子ども子育て関連の事業であるってどういうことだろう。しかし、55.電話料金の節減→IP電話の検討って?なんだそれ。(※番号は行革大綱の中での整理番号)

小金井市は極端な財政の悪化が行革の直接的な引き金になっているけれど、そもそも日本という国全体が「人口減少社会」「少子高齢化社会」「超高齢化社会」へと突入してしまっていて、戦後、人口増と成長経済に合わせて肥大化した国と地方の行政組織を、社会と経済の縮小に応じてスリム化しなければ、いずれ破綻することは誰の目にも明らかだ。

そんな中で、小金井市の18年間にわたる「行財政改革」はあたりまえ、いや、実はぬるいぐらいかもしれない。小金井市民の一人としては、出ていくお金をそれこそ必死で止めてもらいたい。

一方で、就労人口の減少は経済規模の縮小と税収減に直結しているから、ここもなんとか食い止めないといけない。国が、大きな方針として「女性の輝く社会の実現」などと美しい言葉により、一家庭一馬力制から一家庭二馬力制へ民を向かわせ、就労者の減少を補い、税収減をなんとか食い止めようとするならば、二馬力世帯の就労支援策として「安心して子どもを育てることができる社会基盤の整備」はこの政策とセットでなければならないはずだ。要するに、学童保育所は増やさなければならないはずだ、とぼくは思う。

ここ数年、小金井市は、この社会的要求に応えざるを得ない状況の中で、保育園あるいは保育施設を増やし、待機児童の減少に努めてきた。まあ、小金井市に限らず、社会全体の要求であるから、当然の成り行きといえばそれまでだが。そこで疑問、どうして学童保育所は増えないのだ?

さて、ぼくたちはこのような背景の中で、「学童保育所はどうあるべきか?」「学童保育所をどうするべきか?」ということについて、どのような見解を示すことができるだろうか?


参考
第3次行財政改革大綱 https://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kikakuzaiseibu/gyoseikeiei/siryou/dai3zigyoukakutaiko.files/dai3jigyokakutaikou.pdf

前野武彦

2015年8月2日日曜日

学童キャンプ(前原学童 編)

みどり学童のキャンプに続きまして、前原学童のキャンプの様子をお伝えします。
場所は武蔵野公園くじら山です。

キャンプ最初のイベントは火起こしからです。見事成功!

お昼は流しそうめん。竹筒を流れたそうめんの味は格別です。


食後のレクリエーション。テーマは「びしょ濡れで遊ぼう」
父母が持つカードを児童が奪取し、水かけ鉄砲隊を掻い潜るゲーム。
炎天下の中、子どもたちは元気にくじら山を駆けまわりました。

 ドラム缶風呂
テントには手作りの看板。みんな綺麗に工作してました。
疲れ知らずの子どもたちは日が落ちるまでくじら山を走り回るのでした。

1ダース分のひとり言 第一話「行財政改革ってなんだ?(その一)」

前野会長より大人向け夏休みの自由研究、題して「1ダース分のひとり言」を掲載いたします。

【まえがき】
子どもたちが大好きな夏休み真っ盛り。思いっきり遊ぶ一方で、宿題も調子よく進んでいることを願わずにはおれません。

大人たちもそろそろ夏休み、子どもだけに宿題をさせているわけにはまいりません。


さてそこで、大人向け夏休みの自由研究「1ダース分のひとり言」をご提供させていただきます。けっしていやがらせをするつもりはありませんが、退屈かつ長い文章を続々と送ります。

人生の交差点で袖が触れ合ったみなさまと、限られた一年という時間をできる限り有意義に過ごしたい、という切なる願いを込めております。

一回ごとにそれぞれ最後にみなさまへの問いかけが仕込んであります。知っている人も知らない人も、それぞれのお立場でぜひご感想やご意見をお寄せください。特に初めて学童を経験されている方々のご感想をお待ちしております。そして、ベテラン父母の方々に少々厚かましいお願いです。事実誤認や間違いなどお気づきになりましたら即座に矢を放ってください。
それでは早速第1話です。

■行財政改革ってなんだ?(その一)

小金井市は、遡ること20年前、平成7、8年と2年連続で全国財政ワーストワンの都市となった。巷ではドリカムのLOVE LOVE LOVEやミスチルのシーソーゲームなんかが流れていたころだ。 光陰矢のごとし、ずいぶん昔のようで、つい最近のことのようでもある。

さて、火の車状態の小金井市では、平成9年、行財政改革を訴えて初当選した稲葉市長による新市政がスタートした。同年、早速「第1次行財政改革大綱」が策定され、平成12年には学童事業において正規職員3名体制から正規職員2名+非常勤職員1名体制へと移行した。

平成14年には「第2次行財政改革大綱」が策定され、翌平成15年に児童福祉審議会の設置、「学童業務の見直し」について諮問されることになる。市は学童の「民間委託」について児童福祉審議会に意見を求め、児童福祉審議会は「相応の条件を満たした中であれば、可能性はある。」と答申している。

児童福祉審議会には、当時の現役学童父母も委員として1名参加していて、この答申を導くために先輩父母たちは、連日連夜、喧々諤々、ものすごい量のエネルギーとアルコールを消費した、と記録にある。

引き続き、平成18年に「第2次行財政改革大綱(改定案)」を経て、平成22年に「第3次行財政改革大綱」が策定され、平成26年度に「量的拡充及び質の維持・向上を図るための総合的な見直し」の一環として、市内全9学童のうち4学童の民営化が具体化し、ついに今年度(平成27年度)から4学童において「公設民営」としての運営が始まった。

この経緯においても、準備不足として民営化を一度白紙に戻したり、民営化する学童の数について熱く議論したりと、ここでもまた先輩父母たちはものすごい量のエネルギーとアルコールを消費したと聞く。

現在、市はさらに行革を推し進めるべく「第4次行財政改革大綱策定に伴う市民意向調査報告書」なるものを作成している。その中で、学童事業に関連した市民の意見として「市職員による運営・民間事業者等による運営に拘らず、財政支出が少なく、質の高いサービスを提供できるものが、サービスを提供すべきである。」と結論づけている。もっともこれはアンケートの回答枝がそうなっていただけで、大いに誘導された感があるのだが・・・

ザッとこれが平成9年から現在に至る18年間の小金井市行財政改革における学童事業変遷の歴史だ。ともあれ、小金井市は現在も学童事業の民営化を推し進める途上にある。

さて、ぼくたちは一人の小金井市民としての立場で、学童事業をどのようにとらえればいいのだろうか?そして一人の学童利用者としての立場で、市の財政にどのような意見を持てばいいのだろうか?


参考
第3次行財政改革大綱 https://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kikakuzaiseibu/gyoseikeiei/siryou/dai3zigyoukakutaiko.files/dai3jigyokakutaikou.pdf

第4次行財政改革大綱策定に伴う市民意向調査報告書
http://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kikakuzaiseibu/gyoseikeiei/info/ikouchousahoukokusho.files/houkokusho.pdf

書籍:民間委託で学童保育はどうなるの
著者:東京小金井の親たち
出版:公人社