2015年8月7日金曜日

1ダース分のひとり言 第五話「やめない率ってなんだ?」

■やめない率ってなんだ?

第2次行革時に「民間委託」という言葉が初めて市側から活字として示されたことによって、当時の父母たちが色めきたち、このことを真剣に考え始める。

そもそも民営化は良いことなのか、悪いことなのか?なんとなく民営化はよくないのかなぁ、という感覚だけでは議論の余地がない。このことを契機に小金井の父母たちは、他の自治体の実態調査から始まり、学童利用者の意識調査、勉強会の開催等、学保連内部に研究部を立上げ、地道で精力的な活動を展開している。ちなみに、現在の学保連研究部のルーツはここにある。

この調査を通じて、小金井の学童に入所した児童は「ほとんどやめない」ことを発見する。どうやら他の自治体の学童では、学年が上がるたびにほぼ半減する勢いで児童が去っていくことも珍しくないらしい。たとえば1年生で20人入所したとすると、2年生になる時に10人になり、3年生になる時には5人になる、といった具合だ。

地道な調査を進めていくうちに「ほとんどやめない」小金井の学童は全国でも稀であることがわかった。親の就労環境の変化や引越しなどの特別な事情がない限り、子どもは学童を「ほとんどやめない」。要するに、学童が楽しくないから、イヤだからというだけの理由で学童を去る児童は極めて少ない。

ぼくは小金井の学童しか知らないから「ほとんどやめない」学童があたりまえだと思っていたが、当時に限らず、現在でも児童が「ほとんどやめない」学童は全国的にも稀なことだそうだ。この「ほとんどやめない」ことを地道な調査で数字に置き換え、表にして明らかにしたのが「やめない率」である。

たとえば、1年生で20人の児童が学童に入所したとする。3年生で卒所するときに、18人の児童が同じ顔ぶれだったとすると、「やめない率」は90%となる。

「やめない率」の調査は近年途切れてしまっていたが、民営化へ移行しつつある現在、継続的に調査を実施することで、果たして学童がこれまでと変わらず運営されているかどうか、直営と民営で保育に差が出ていないか、を浮き彫りにするための指標としたいとの考えから、今年度の学保連研究部が中心となって復活させようとしているところである。

さて、ぼくたちは「やめない率」が極めて高い小金井の学童を継続して望むのだろうか?
それとも、子どもが行くのを嫌がるかもしれないけれど、学習機能付みたいな付加サービス山盛り系の学童を望むのだろうか?


参考
書籍:民間委託で学童保育はどうなるの
著者:東京小金井の親たち
出版:公人社


前野武彦