2015年8月8日土曜日

1ダース分のひとり言 第七話「学童保育所運営基準ってなんだ?」

■学童保育所運営基準ってなんだ?

さて、当時の父母たちが発見した小金井学童の「質の高い保育」。学童を取り巻く社会状況がたとえどう変化しようとも、この質を維持・発展させるためにはどのような手を打っておけばよいか、を考え始めた。本当に頭の下がる思いである。

まず、当時の学童保育の現場をていねいに紙面に写し取り、さらに少しの理想を加えれば、それが小金井学童の基準となり、事業者が変わろうと、大規模化が進もうと、利用者の意識が変化しようと「保育の質」を維持できるのではないか、という方針の下、ものすごいエネルギーを投じて「運営基準案」を作成するに至っている。

なんと行政ではなく、学保連を中心とした父母が作成しているのだ。そして、平成17年に「小金井市学童保育所の今後のあり方に関する要望書」というかたちでまとめ上げ、市長と児童福祉審議会に提出している。

そして、三年後の平成20年に、市は現在の運営基準の原型となる【学童保育所運営基準】を完成、公表した。しかしその内容は父母たちが作成した「運営基準案」とはだいぶ違う内容であったらしい。感覚的かつ抽象的な表現は一掃され、量で計れる部分だけが残った。ただし、その後、当時の父母たちの粘り強い働きかけによって、冒頭に「小金井市学童保育所保育理念」を加えるという改定が成されている。まったくどうして小金井学童の父母たちはこんなに熱いのだろう。

その熱さは現在も冷めることはない。昨年、4学童が民営化されるにあたり、【学童保育所運営基準】の改定が行われた。改定の方針は、民間事業者向けに文言の修正を加える程度の技術的改定であった。しかし実は、民営化は「総合的な見直し」の一環であって、障がい児枠の撤廃、職員の加配の中止、という極めて重要な見直しも「総合的な見直し」の中に含まれていた。民営化にかかわる改定の陰で、そのことはひっそりと数字だけが改定されようとしていた。

学童が民営化、大規模化していく社会的状況の中、そもそも福祉事業であるはずの学童保育が、新たな利用者層の中庸をもって標準化されてしまうのではないだろうか、という懸念があった。つまり、社会的弱者に対する視点がなおざりになってしまうかもしれない、という懸念である。そのことに危機感を覚えた学保連研究部が「全ての児童の人格と個性を尊重し、共生の場を目指します。」という一文を冒頭の「小金井市学童保育所保育理念」に加えるべく、粘り強く市に働きかけ、ついに実現した。ぼくは何度も何度もこの一文を復唱し、こみ上げるなにかで枕を濡らした。

さて、ぼくたちは先輩父母たちの努力の結晶である【学童保育所運営基準】をどのように活用すればいいのだろうか?そしてどのように次世代につないでいけばいいのだろう?


参考
書籍:民間委託で学童保育はどうなるの
著者:東京小金井の親たち
出版:公人社

ハンドブック:私たちが望む学童保育のあり方
編集:小金井市学童保育連絡協議会

学童保育所運営基準(改定版)本文
http://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kodomokateibu/jidouseisyounenka/siryou/D5503020_20120113.files/26.10.7honbun.pdf

学童保育所運営基準(改定版)資料
http://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kodomokateibu/jidouseisyounenka/siryou/D5503020_20120113.files/26.10.7shiryou.pdf


前野武彦