2015年8月7日金曜日

1ダース分のひとり言 第六話「保育の質ってなんだ?」

■保育の質ってなんだ?

小金井学童の児童は、どうして「ほとんどやめない」のか?
当時の意識調査によると、利用者の満足度がかなり高い。それはきっと「保育の質」が高いことの証左ではないか。学童という場所が子どもたちにとって居心地のいい場所になっているに違いない。きっと小金井の学童指導員は、そういう場所を創ることに長けているのだ。と検証を進めた。

ではいったい「保育の質」ってなんだろう?と当時の父母たちは次のステップに踏込んだ。
改めて学童をよく観察してみると、日々の生活の中での「あそび」や「取り組み」といった「保育内容」が優れていることを発見する。さらに、その「保育内容」を実践している「指導員の質の高さ=子ども好き×知識×経験×安定収入」に気がついた。そして、日々「あそび」や「取り組み」の「準備」をして「実行」して「検証」して「改善」する。そしてちいさなことでも「伝達」する、というような運営サイクルも完成されていた。

小金井の指導員は、そもそも市の職員として採用されているため、就労環境が安定し、定着率が高い。ゆえに知識や経験が蓄積され、それが次の若い世代へとうまく引き継がれていく土壌があった。

結論的に言えば、ベテランと若手のバランスの取れた指導員たちが、よく練られ、充実した保育内容を実践してこそ、子どもたちにとって居心地の良い場所を創ることができ、みんなが離れたくない学童になる。

当時の父母たちは、直営か民営か論争もさることながら、すでに目の前で実践されている「保育の実情」=「質の高い保育」を維持・発展させてゆくことが、ほんとうは最も大切なことで、このことをこそ、未来につないでいかないといけない、と考えてくれた。

このような保育は今でも継続している。ぼくたちは、この学童の日常に気づき、理解しているだろうか?そして感謝しているだろうか?とかいっても、小金井の学童しか知らないぼくたちにとっては、あたりまえのこととしかとらえようがないのだけれど。いつだって大切なものは、失った時にその大きさに気づくのだ。

きっと、小金井のベテラン指導員は「保育職人」に違いない。0.01mmの厚みの違いを指の腹で触って言い当てるぐらいの「匠」のレベルに達しているはずだ。

さて、ぼくたちはこの「匠の技」を次世代につないでいく方法を知っているだろうか?
あるいはこれからその方法を編み出すことは可能だろうか?


参考
書籍:民間委託で学童保育はどうなるの
著者:東京小金井の親たち
出版:公人社


前野武彦